暗闇レストラン

先日友人から面白いレストランがあるよと教えていただき、そのお店に行こうと予定を合わせて行ってきました。
そのレストランは
暗闇レストラン
と称して、暗闇の中でコース料理を食べるというお店でした。
当日。私は友人と待ち合わせをし、そのレストランに向かいました。
暗闇空間での食事を行うため、1日1回、時間は18:00〜のみの完全予約制で15人程度までしか入れない。とかなり尖った営業方法で何よりもその空間での体験やそこに存在する価値提供にこだわりを感じました。
中に入ると予約していたお客様がずらっと並んでいて、店舗からの注意事項と案内が始まりました。暗闇空間では
・電子機器や一切の光を禁ずること。
・勝手に席を立ち歩かないこと。
・その空間では人間の目が一切慣れることはない事。
・暗闇空間での不安から気分が悪くなる場合がある事
などこちらも様々なルールがありすこし窮屈に感じながらも好奇心に身を任せて暗闇空間に入りました。
入室すると同時になにも見えない空間が目の前に迫り少し立ちすくみましたが店員さんに手をとっていただき席に着席して、
自身の箸やおしぼりなども常に机のどこにあるのかの手探り状態で料理の提供が始まりました。
コース料理はメニューを伝えられず
香りや味覚、食感などから予想して友人とこれはとうもろこし?たけのこかな?などただひたすらにメニューを予想したり嗅いだりして楽しみました。
味覚が喜ぶほど美味しい料理を嗜みながらも自分の中にずっと違和感が残っており、その疑問を店員さんに聞くことにしました。
店員さんはとてもスムーズに料理の提供を行っていて自分自身は箸を探したり飲み物を探すのですら一苦労だったのになぜそこまでスムーズなのかとお聞きしたところ
「私は暗闇のプロですので。」
と伝えられ、この食事が終わった後に明るい場所で話しましょうと言われました。
参加者全員がその質問に耳を傾け、興味や意識がこの会話に向いている感覚だけが残り、最後まで食事を楽しんだ後全員で退出をしました。
暗闇空間から退出した後は食べた料理の写真や説明が行われ、最後に答え合わせをするような流れで食事の後も楽しめるシステムでした。
説明も終了した後すぐに
「みなさまお疲れ様です。暗闇空間での食事はいかがでしたか?」と
先ほど聞いた声が聞こえてきました。
そこには50代前半くらいの白髪混じりの男性が立っていました。
彼の姿を見ると同時に私は自身の投げかけた質問の答えがわかりました。
彼は生まれてから現在まで一度も光を感じたことのない完全に盲目の男性とのことでした。
その他の店員さんも暗闇での食事提供はかなり難しいとのことですが、彼はスムーズに空間把握を行い料理を提供できるまさに暗闇のプロフェッショナルでした。
彼は自分の仕事に誇りを持ち、自分だからできる仕事だと言っていました。生きていく上ではデメリットになる部分をしっかりプラスに昇華させてる姿はとてもたくましく、素晴らしく思えました。
適正業務や苦手な部分を視点を変えてプラスに変えていったり、改善を行なっていく部分は会社での業務にも不可欠な要素であり、普遍的に自分の人生にも必要な要素だと感じました。
その後、彼の感覚の鋭さや日常生活において工夫していることをたくさんお話しいただき、
私はその店を後にしました。