格好いい祖母と私

祖母はいい意味で淡白な人だ。
それでいて潔く格好いい。

文明の進化に感謝するこの頃、一人暮らしの祖母を心配して電話をするも「用済んだか。もう切ってえいか。」と少々冷たい。長電話はお気に召さないらしい。

ご飯を美味しそうに食べる私を見るのが好きだと言ったのに「食べ過ぎや。私の5倍くらいの体になるつもりか」と少々辛辣。

しかし私は一切気にならない。何なら200回は優に超えた祖母の昔話だって今日初めて聞いた!すごい!と驚いてあげる。祖母専用の名女優になってでも彼女を喜ばせたいくらいに大好きだからだ。

そんなマザコンならぬ祖母コン?である私は、最近になって【祖母が泣いている夢】をみた。寂しさに涙を見せる祖母を遠くから見ている。手を伸ばしてもそれが届くことはない。私が知る限り祖母の泣く姿は見たことがなかったので余計に苦しく悲しい夢だった。

どうしてこんな夢を見たのだろう。

祖母はいい意味で淡白な人だ。
それでいて潔く格好良くて泣かない。

祖父が亡くなった日も祖母の横顔はとても凛々しくやり遂げたといった表情だった。
「どうして泣かないの?」と私が聞けば、

「泣いてもかえってこないからね。それに私はおじいちゃんとの時間を長く楽しんだ。」と言い切って笑っていたのだ。葬式が終わって祖母の家に泊まった夜に「おばあちゃんは後悔したことってある?」とまた聞いた。祖母は私の頭を撫でながら「おじいちゃんと結婚して、息子が2人、自慢のかわいい孫もおる人生に後悔なんかいらんよ。色んな選択に悩んでも今ここで笑えてたらそれが答えやろ。やりたいことやっときよ、今は今しかないんで」と笑った。今思い出しても心が温かくなる魔法の言葉だ。

自分の人生を振り返って「後悔がない」と言えるくらい祖母は毎日忙しなく閃きを探して動き回っている。
趣味のカラオケも季節ごとに植え替える畑仕事も抜かりがない。明日も明後日も祖母には予定がたくさんだ。超格好いい。

どうしてあんな夢を見たのだろう。

祖母はいい意味で淡白な人だ。
それでいて潔く格好良くて泣かない人。
それから趣味や夢がたくさんあって人生を謳歌している私の憧れ。

そんな憧れの祖母に見習うべく趣味のなかった私も趣味探しから始めることにしよう。いつか誰かに自分の人生を問われたら自信をもって答えられるように。

今年で米寿を迎える敬愛なる祖母へ、
おめでとうございます。大好きです。会いたいです。
寂しくなったら電話をください。長電話はほどほどにするから私もたくさん電話をするね。
これからもあなたの後悔のない人生の一部であれますように。

自慢のかわいい孫より sgmt